思い その9「自分と社会を断ち切る… 自殺と他殺は同じ事」

私自身の考え方を述べれば、「自殺」と「他殺」は同じ事です。極力簡単に説明すれば「相手(世界)を消してしまうか」「自分(意識)を消してしまうか」の違いです。どちらも「世界と自分との関係を断ち切ろうとする行為」ですから、同根です。
紹介されている書籍はその要因の一つに「所得格差」を上げています。それに関しては私も同感です。「貧困」ではなく、「所得格差」なのです。それに関して「自殺・他殺」の死亡者数推移に「失業率」を加えた資料がありました。厚生労働省の「人口動態統計」(補足説明※16)です。非常に興味深いデータで、「自殺・他殺」と「失業率」の相関が一目で分かります。詳しくは、補足のページでご覧ください。簡潔に説明すると、かつて(1950年代)は「他殺」が年間2千人前後まであったのが、今は昨年で400人を切っています。片や「自殺」も1950年代(戦後)、2万人前後という決して少なくない数字でしたが、今やこの14年、「自殺者3万人」の時代が続いています。社会自体は戦後に比べ、桁違いに豊かとなっているのに、です。その「自殺者数」の推移と「失業率」の推移とがシンクロしています。つまり「他殺は減少しているが、自殺は増加傾向にあり、その推移が失業率の推移と同じ傾向にある」という事です。
「自殺のない社会へ」という本の中で著者は「経済・政治」の観点から自殺の増加を分析しています。
私の考えはあくまでも「仮説」ですが、「人と社会」との関わりの中からそうした現象を分析するのは非常に意義のある事で、「遅すぎた」けど、それがようやく始まったと思います。「自殺」について考える精神科医は「他殺」については論ぜず、ややもすれば「極めて個人的」な所から分析しようとする傾向が強いように思います。自殺カウンセリングも然り、です。
新聞や週刊誌の記事で見る事がありますが、「他殺」を犯した者が、その凶行に至る前に「死んでしまいたい…」と周辺の者に漏らしていたとか、凶行に至った後に「死んでしまいたかった…」とその動機を話すとか…。殊更そこに論拠を求める訳ではありませんが、そこには「殺したい」と「死にたい」が同居している不思議な状態があります。問題は、どちらに行くか、です。「他殺」は社会的な存在としての「自殺」のようなものです。で、どちらも同じだと考えざるを得ないのです。
繰り返しますが、そこには「自分と社会」との関わりが大きな要因として存在する訳です。「鬱で自殺した」などは結果論です。本質的な要因は「社会」にある筈です。つまり、社会が要因である以上、そこに「社会科学的」な分析が必要なのは当たり前です。
もちろん、「自殺・他殺」を全て社会的要因で語る事は出来ないと思いますが、その比重は相当に重いと考えます。この著書の中で「所得格差」について「スティグマ(烙印)の影響が大きいのでは」と述べられているのは非常に興味深い事です。単純な貧困の中での自殺率は低い筈です。統計でみれば、自殺率は先進国といわれる国々で圧倒的に多い。貧しさの中では、それどころではないという事でしょうか…。皆が、生きる事に必死になっている社会がそこにはある筈ですから。しかし、先進国の作り上げた社会は様々に複雑なシステムで動きます。到底、個人には全体像を捉えきれません。その社会に対して「個人」が疎外される、疎外感を感じてしまうのは、当然の成り行きではないでしょうか。著者の言われる「スティグマ(烙印)」とは「常に一方的に押されるもの」です。社会から。
それに抗い、その烙印から逃れるためには、社会との関係を断ち切る以外にないと「個人」が考えた(追い詰められた)としたら…。
国際比較をしても、特に日本は「所得格差」と自殺との関連が強いとの分析です。これも比較的分かりやすい事だと思います。日本の「所得格差」は単純に「どんな会社にいるか」で決まりますから。そこは「自立、自己責任、自主、流動性、努力」とは縁遠い世界です(失礼ご容赦)。「会社」なるものの中で、「個人」がそのようなものを手にできるのは非常に稀でしょう(経験則)。生活をそこに依存している以上、自分ではどうにもならない「格差」という「烙印」を押されてしまいます。そこから逃れるには…。
アメリカで頻発する「銃乱射」のような事件が、日本で頻発しないように願いたいものです。その傾向は既にありますよね。「社会的自殺を願望」する人たちが増えているような…。
「思い徒然」編 目次へ
★不思議 その69「キリンの首は、ある日突然に伸びたのか… 中間のない進化?」」
★不思議 その31「水滴が…? どこから?」
★不思議 その27「人が壁をすり抜ける確率は? 電子のトンネル効果」
★不思議 その45「目を閉じているのに、何か見える…」
★不思議 その77「虫の知らせ それは特別な予知能力か、人の持つ自然な力か…」
■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
