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思い その40「高性能な受信あっての発信 コミュニケーション成立の大原則」


聞こえるある日の某朝日新聞の「天の声、人が語り」を読んでいて思いました。「ホント、たまに良い内容のものがある」。某社の論にはけっこう偏向を感じるのですが、それはさて置き、文化欄などにはなかなか面白い記事があったりします。好き嫌いという「全肯定、全否定」ではなく、どの新聞、メディアであれ、書く人の想いがストレートに伝わってくるものに出会うと、雑学脳の引き出しに面白い材料が収まります。

要は本土と沖縄についてのことが書いてありましたが、そこへ至る前半が面白い。冒頭に森鴎外の名が出てその作品について語るところから始まっています。ちなみに、そこで引き合いに出された作品は「最後の一句」という短編ですが、読んだかどうか記憶が怪しい…。森鴎外は大体読んでいたつもりなのですけど、ウーン…。ま、それはそれとして、森鴎外の短編、掌編には不思議な読後感が付きまといます。有名どころでは「高瀬舟」、あと「寒山拾得」や「かわらけ」など。

作品のネタバレになることは書かない主義なのですけど、そこで作品紹介がされているので概略を。死罪を告げられた父親の命を助けようとする16歳の町娘の話ですが、話自体のフレームは儒教的道徳観の「孝」でしょう。奉行所で、娘は自分たち子供の命と引き換えに父親の助命を訴えます。その町娘に奉行は聞き返します。「その願いを聞けば、お前たちは死んで、父親の顔を見ることはできないが…」。当然の質問です。読む者の頭には、ここで予定調和的な「孝」を語る娘の答えが掠めてしまいますが、そこは森鴎外。読者の予想を見事にはぐらかせてくれます。

娘が奉行にそれは承知という意志を示し、言います。「お上(かみ)の事には間違いはございますまいから」。この、ストレートボールを受けた奉行の心は動きます。で、結局はハッピーエンドのお話なのですが、ここで思うことがあります。単純に言えば、この奉行がもし「ぼんくら」であって、その町娘が我が身を賭して発した言葉に何も感じなかったとしたら…。まあ、ハッピーエンドとは行かないでしょう。この町娘は命懸けで、奉行に想いを突き付けたのです。

ここで、言葉の達人、詩人、茨木のり子(個人的に彼女の作品が好きです)が「言葉の発し手と、受け手とがぴたりと切りむすんだ時、…」その時初めて「言葉」が成立すると評しています。森鴎外のこの作品のキレ味はまさにそこにあり、ただの美談などではありません。茨木のり子は更に言葉を続けます。「全身の重みを賭して言葉を発したところで、受け手がぼんくらでは、…」、その言葉も不発に終わり、流れてゆくのみ、と。言葉という「人の想い、心」がピタリと一致してこそ、物語は成立します。大江健三郎が「小説の方法」の中(確か…)で言っている「書く事と読む事とは本質的に同じである」と云った言葉とも重なります。

単にコミュニケーションと云えば分かりやすいのでしょうが、人の意思疎通なるものを成立させるのは、「発信」と同等に「受信」の力が必要となります。「発信」が「ぼんくら」なら、それはそれまでの事ですけど。

「今の世の中、ぼんくらが多くて疲れるね…」なんて、昔あったCFの台詞のようなことをいいたのでは決してありません。「発信」と「受信」は五分と五分。どちらかに、不遜、傲慢、無知があり、更に言えば「理解しようとする努力の姿勢」さえ無いとすれば、どのようなコミュニケーションも成り立たない。そういう、絶対的な「律」ともいうべきものでこの社会は成り立っているのは事実です。「ぼんくら」という、才能に近いものを言ってしまうと身も蓋も無いのですが、少なくとも「相手を理解しようとする姿勢」なしには、どのようなコミュニケーションも不成立。

往々にして「作品世界」を語る時、「発信者」の誉のみに目が行きますが、その発信された作品を創るのは最終的に「受信側」なのです。そこが弱ってしまったとしたら、社会全体は「創造性」を衰微させ、「考えること」を面倒くさいとしてしまう脆弱な世の中が一丁上がりとなります。誰も、自らが「ぼんくら」でありたいなどとは思わない筈なのに、ぼんくらが…。

で、この話が繋がるところは冒頭に記したように「本土と沖縄の関係」なのですが、これはもう、「本土」がぼんくらで…。

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