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思い その22「人と家との関係 住むという事」


家 住む何度目かの引っ越しもようやく落ち着いて、何とか生活のパターンができ始めました。最初は部屋の造りや配置、家具の置き場所等々で、生活上の「導線」が変わり、また、必要な物がすぐに出てきません。いずれは慣れると思いながらも、やはり最初は戸惑います。アパートやマンション、一戸建てに住んでみると、やはりアパートやマンションは生活の導線がコンパクトにできます。特にマンションは、そのマンションの造りにも拠りますが、断熱効果にも優れ、入り口からの造りも生活導線を考えて作ってあるのか、なかなかに快適でした。しかし、そこで生活していたという記憶は何故か「希薄」です。

で、今度は戸建て。色々と訳あって、二十年くらい前に住んでいたところに戻ってきただけなんですけど。二階を自分の仕事場にしていますが、二十年前に置いておいたものがそのままになっていたりして、これまで生きていた時間の感覚に一瞬、戸惑います。

まあ、しかしそこは時間の問題で次第に部屋の景色は「今の生活」の色に染まって行きます。その中で、特段の事は無いのですが、「へぇー…」と思うような事があります。二階の部屋は二十年間殆ど物置状態で、人のいない時間が永かったためか、全体に、建付けが渋くなっています。それは当たり前でしょうが、少しずつ手を入れて細かい補修をしていきます。すると、最初は堅く感じた床も、気持ち、柔らかになってきたように感じます。少し歪んでいた各箇所(戸の隙間や、押入れの戸など)も、気が付くと真っ直ぐに…。壁紙などは、不思議な事ですが、上の継ぎ目辺りが割れて剥がれていたのですけど、気が付くとそれが自然に治っています。掃除をしても、カビ臭さがしばらく残っていたのが、気が付くと消えています(慣れもあるのでしょう)。

要するに、部屋が自然と「再生」していく感じなのです。月並みな表現ですが、部屋全体が「呼吸」を始めたような。造りは古いのですが、今のような「工業製品」となって、工場で作られ、現場では組み立てるだけの家ではなく、腕のいい大工さんの作った家です。壁や床、押し入れなどから、最初の「堅く、ずれた感じ」が薄れて、全体に「柔らかく、馴染んで」いくのがハッキリと感じられます。「家が生き物」という陳腐な表現をするつもりはありませんが、やはり「家は人と共にあるもの」という事を皮膚感覚で感じます。

親戚が家を新築したという事で「お呼ばれ」していくと、今流行りなのかどうか、窓が少なく、エッジの聞いた「妖怪ぬりかべ」のような外装で、どうも落ち着きません。どこかのショールームのような造りで、生活感がない…。正直、「こんな家で暮らしていたら、情緒不安定にならないかな…」と感じます。その後、何度か訪れても、いつも同じような感覚を覚えます。人の家をバカにしている訳では決してないのですが。

人が住んでいない家は、あっという間に「廃屋」となり、崩れ始めます。やはり、寒暖の繰り返しで、構造物として弱って行くのでしょう。しかし、人が住んでいると「寒い時には温め、暑い時には涼しくし、部屋の空気も入れ換え」、家は人の生活と共に「生きていく」ものなのでしょう。その関係はやはり「木」だと思います。工業製品となった家ではなく、昔ながらの大工さんが自分で木を選び、カンナで削り、ノミで彫って組み立てた家です。今の街の景観をみると、全てがプラスティックモデルのような景色。生活の「艶」のようなものをだんだん感じられなくなっているような…。家は「人といる」というより、「資産」とやらになってしまったのでしょう。

昔、故半村良の短編に、確か「家」をテーマにした作品がありました。古い作品なので多少のネタバレご勘弁で言えば、ある旅人が山で道に迷い、そこで一軒の古い家を見つけ、一夜の宿にと中に入ります。すると、家の中は古びた外観とは違い、新しい畳に、調度品、なんと美味しそうな料理の載せられた御膳までありました。しかし、誰も住んでいる気配はない。旅人は、後で住人に謝ろうと、空腹をその料理で満たします。すると、どこからともなく、風呂の湯が沸いているような気配。旅人は風呂で疲れを取り、寝ようと思うと、なんと布団までが用意されています。旅人は気味が悪くなってきますが、そのまま「食い逃げ」するのも気が引けるため、誰かが出てくるまでしばらく、その家で、同じように暮らしました。しかし、一向に人の気配がありません。旅人は、また来てお礼を言おう、とある朝、出立しようとします。そして、山道を歩いていると、何かが後ろからズンズン追いかけてくるような響きが。旅人が振り返るとそこには…。

ラストはもうご想像できると思いますが、打ち捨てられた廃屋が、人に住んでもらいたくて一生懸命に、久々の人に対して尽くしていたのです。この作品を読んだのは随分と昔ですが、それ程奇抜な展開のあるストーリーではありませんけど、妙に記憶に残る作品です。テーマがシンプルで身近だからでしょう。頭に浮かんだ言葉は「共生」でした。「人と家」とが共生…。妙な表現ですが、引っ越しを終えて落ち着き始めた今、その言葉を思い出します。家は人が生きていくための構造物であることは間違いありません。が、情緒的に過ぎるかもしれませんけど、やはり、自然界の生物の「巣」と同じで、一体となって「共生」していくもののように思えます。

オヤジの愚痴のようですが、どうにも家というのが「本筋」を違えたものになっているようで、特に「バブル」を経験した世代としては、家が過度に「資産・財産」化し、最近の家並みがノッペラとした景色に見えて、人が生活しているという匂いを感じません。まあ、これは「歳」と言われれば素直に認めましょう。昔の家並み、そしてその家で育った日本人の情緒と、今の立体感のない景色の「機械的」な家で育った日本人の情緒は、違うでしょうね。金持ちとか貧乏とか、そういった価値観は置いといて、事実、最初の「共生」を覚えるのは「家」単位で、その「家」は人間関係以上に、社会性を育んでくれるように思います。

一緒に呼吸してくれる「家」というのも、なかなか Comfortable ですよ。

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