思い その11「自分だけは大丈夫… 脳が自分を騙すのか…」

この話は、「不思議」とも「怖い」とも「変」とも微妙に馴染まないテーマであるような気がしますので、そのような話を書くための「この編」に書きます。しかし、「不思議」でもあり、「怖い」でもあり、「変」でもあるような言葉なんですよね…。日常を平穏な気持ちで過ごすためには、必要な事でもあるようにも思います。何かあるたびに不安を覚えていたのでは、精神衛生上、よくありませんから。例えば、あの東日本大震災の原発事故で、海が放射能漏れで汚染されましたが、房総(外房)辺りでも、そこにいる魚は危ない、とか、特にヒラメはダメ、とかけっこう風評が立ちました。私は釣りが好きで、外房が主な釣り場ですが、そういう話を聞いても、「もういい加減生きたから、かまわない」と開き直って、ズッと同じように釣りを続けていましたし、釣った魚を食べていました。しかし、本当に釣りを外房でやらなくなった人がいるのも事実です。
ちなみに、私は西日本のかつて原子爆弾が落とされた地方で生まれ、確かに親戚に被爆でなくなった者もいました(聞いた話です)。黒い雨の話をよく聞かされ、雨の日に外に出る時は必ず帽子を被れと言われました。原爆投下直後は、向こう30年、放射能に汚染され、草木も生えないと言われていましたが、私が物心つく頃には、普通の地方都市でした。そのような経緯もあるので、半ば「確信犯」的な気持ちで、魚も、その辺で取れた作物も気にせず食べていました。それが決して、楽観にも近いような「正常化の偏見」とは思っていません。
如何せん、放射能事故に関しては歴史的に「情報が少ない」のです。頻繁に起こる事ではありませんから。もちろん、原発の周辺にいらっしゃる方々は危険ですし、不安でいらっしゃるのは当然ですけど、端的に言えば、お向かいの国々が日本の食品を限定的とはいえ、禁輸したり、日本の中でも周辺地域の食品を避けたりするのは「逆・正常化の偏見」だと思います。つまり、過剰反応。これはむしろ、楽観気味の方が確かに日常を平穏な気持ちで過ごせます。風評はあくまで風評であり、キリがありません。確かに、判断が難しいところではありますが…。
しかし、風評ではなく、今現実に直面している驚異、災害に対しては、確かにこの「正常化の偏見」が「非難を遅らせる」ことになるようです。事実、そうして助かる者が助からなかった例は多いとか。「あの時にすぐ非難していれば…」という、取り返しのつかない後悔が、「大丈夫だろう」という根拠のない憶測で引き起こされてしまいます。目の前に迫っている災害は、風評などとは違います。
興味深い事に、かつて災害を経験した地域の住民の方が、経験の少ない地域の住民よりも「非難の必要性を過少に評価する」傾向があるそうです。非難しなかった理由は「経験から判断し、被害が出ると考えなかった」が最も多かったそうです。その中には事実、逃げ遅れる人が多かったようです。「自分の経験(過去の結果)」と避難勧告などの情報を比べて、「前は大丈夫だった」という都合の良い方を選択したという事でしょうか。
地方自治体にとって、これをどう防ぐかが今問題になっているようです。避難勧告時に、極力、具体的な地名、例えば「市の北東部」とかではなく「○○町」「○丁目」まで細かくした災害予測情報を流す事によって、住民が避難する率が3倍以上になったそうです。
確かに難しい所です。極論ですが、パニックを押さえるための冷静さと、根拠のない都合の良い判断で災害に合う事は、結果論として紙一重のようなものかもしれません。「正常化の偏見」とは、人の脳が自分の平静を維持するために「脳自身を騙している」のかもしれません。そうであれば、一概に弊害のあるものではなく、人にとって必要な面もあるかもしれません。
またまた極論ですけど、これが戦争などになれば、自分の身の処し方、行動については極めて冷静な情報分析と意思決定が迫られます。根拠のない平静よりも、「疑わしきは罰する」覚悟で行動すべきなのでしょう。ただし、風評と呼ばれるものに関しては如何せん情報が少ない場合が多いので、これは難しいでしょうが、「目の前に迫っていることに関しては、即行動」、風評などのように少し考える時間が取れるものに関しては「それを一度疑ってみる」ということが「脳に騙されない」方法でしょうか。
これを個人責任の次元で語る事はできませんが、不謹慎な表現ながら、自分の脳と、一度ゆっくり相談でもできればいいのですけど…。
「思い徒然」編 目次へ
★不思議 その69「キリンの首は、ある日突然に伸びたのか… 中間のない進化?」」
★不思議 その31「水滴が…? どこから?」
★不思議 その27「人が壁をすり抜ける確率は? 電子のトンネル効果」
★不思議 その45「目を閉じているのに、何か見える…」
★不思議 その77「虫の知らせ それは特別な予知能力か、人の持つ自然な力か…」
■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
