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怖い その7「何でもない早朝の景色なのですが…」


ブランコ私の学生時代はアルバイトの毎日でした。如何せん、金もないのに東京の大学に出てきましたので学費はもとより、生活費も自分で稼ぐ必要がありました。別に苦労自慢ではありませんが、仕送りのある友人たちを羨ましく思ってはいました。まあ、自分で選んだ進路ですから文句はありませんが。同じような連中、昔はけっこういました。

話が逸れてしまいましたが、学生時代に新聞配達をしていたころの事です。朝の弱い私にとっては少々きついバイトでしたが、住み込みでできる(もしくは安いアパートの家賃を出してもらえる)のでありがたい。毎日、朝の4時に起きて新聞の専売所に向かいます。場所は池袋界隈です。で、朝、専売所への近道をするために神社の境内を抜けていくのですが、ここには滑り台やブランコなど、子供が遊ぶスペースがあります。

季節は初冬だったと思います。ジャンパーを着ていた記憶がありますから。眠い、寒い、で神社の境内の中を歩いて行きます。冬の早朝ですから街灯の明かりがボンヤリと辺りを照らす薄暗い中です。ふと、ブランコの方を見やると、一瞬ドキッとしました。まだ小学校前位の男の子がブランコに乗っています。下を向いたままブランコを漕ぐともなく静かに座っています。それだけの光景なのですが、冬の早朝、4時過ぎですよ…。まだ暗い…。それだけでもドキッとさせてくれるのに、セーターらしきものは着ているのですが、半ズボン姿です。私はジャンパーを着て身を縮めているのに。

声をかけようにも「寒くない?」、もしくは「家に帰りなさい」くらいしか思いつきません。私は黙ってそのまま前を通り過ぎて専売所に向かいました。気にはなっていましたが、別にあり得ない景色でもないし、私も子供の頃、夜中に外をうろついたことはありますし、子供は大抵、昔は半ズボンでした。

新聞配達を終え、アパートに戻るころはもうすっかり明るくなって、あのブランコに子供の姿はありませんでした。それ以後、早朝に、あのブランコに乗っている子供の姿を見かけた事はありません。

しばらくその事は忘れていたのですが、新聞配達のバイトを止めて、他のバイトをしている頃、ふとある事を思い出して、考え込みました。新聞配達をしていたのは池袋界隈で、この辺りには、池袋でホステスをやっている方が住んでいるアパートやマンションが多く、新聞代の集金に行った時、目のやり場に困るような恰好で出てくるオネーサンもいました。中には小さな子供と一緒に住んでいるオネーサンもいました。住んでいる家も、ややゴージャスなマンションもあれば、風呂が付いている程度のアパートもありました。まあ、失礼ながら「稼ぎ」で違ってくるのでしょう。

で、何を思い出したのか? 新聞配達を止めてしばらく経っていたので記憶の時系列が曖昧なのですが、私の担当区域での事ではありませんでしたけど、専売所からそれほど遠くない所で夜、火事があって、アパートが全焼したという事がありました。そのエリアが担当区域だった専売所の仲間から聞いたのですが、どうも、ホステスをしていた方の子供がその火事で亡くなられたそうで、まだ小さな子供だったとの事です。専売所の仲間は皆、「可哀そうに」と口を揃えてその子の事を悼みました。世間によくある話かもしれませんが、母親の帰ってくるのを一人待っていた子供が災難に遭ってしまった…。切ない事です。聞いたのはそれだけで、火事ですから冬の事だったでしょうか。

その話を思い出した時、あのブランコに乗っていた男の子の事を同時に思い出しました。正直、ちょっと怖くはなりましたが、その火事とブランコの男の子との相関性は分かりません。しかも、火事のあった所とブランコのあった境内とは、それほど離れてはいませんが、近くもありません。

何もそれをくっ付けてお話を作ろうなぞとは思ってもいませんが、似たような話がゴロゴロあるのは事実です。つい「あの子は…」などと考えてしまうのです。冬の早朝の何でもない景色といえばそうですけど、朝の4時にあんな小さな子が一人で…。普通とは言い切れません。

怖いというより切なくなってきます。もし「そうなら…」、ああやって一人、母親の帰りをずっと、待っていたのか…。

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