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怖い その65「知らぬ間に、『生き急いで』いませんか…」


考える 熱中してしまうと、「のめり込んでしまう」「ハマッてしまう」なんてのはよくあることです。ゴルフや釣り、個人的な趣味を上げれば日本刀(本身、真剣ね)や腕時計、ギター(なぜか十本以上あります…)、4WDの(合法的)改造、PCでの家庭内ネットワーク作り(殆ど役立たず、無用・無駄)などなどなど…。まあ、どれも本人は楽しいから問題は無いのですが、熱中している時はそれがこの世で一番楽しいことになってしまいます。で、この「のめり込む」「ハマる」とはよく言いますが、その姿は子供の様なものでしょうね。傍から見ればバカみたいかもしれません…。

で、そんなのは周りでよくあることなのですけど、ある話を聞いて少々、背筋に冷たいものを覚えたことがあります。話自体はどこにでもあるようなことなのですけど…。

ある広告代理店の方から聞いた話なのですけど、仕事で海外のリゾート地に出張したときのことです。話の前に余談ですが、広告代理店はよくTVCMの制作で海外での撮影を提案します。別に、国内で撮っても同じようなものだと思うのですが、「いや、太陽の光が違う」とか「画像の映り方が全然違う」とか、まあ、大体同じようなことを主張して海外ロケの予算をブン取ります。まあ、クライアント(企業)の金で海外リゾートってのも楽しいもんでしょう。自分の金じゃ行かないんじゃないかな。

話を元に戻します。で、これはクリエイター(制作スタッフ)からの話ではなく、営業の方から聞いた話です。仕事を依頼するクライアントも撮影現場に行きますから(実はこいつらもグルで海外撮影に予算を出しているのでしょう…)、その面倒くさいお世話に営業が奔走しなければなりません。予算の管理も必要ですから。で、広告代理店の局長、部長クラスも同行して、まあ、お決まりのゴルフや夜のおもてなしで、営業はかなり忙しいのです。

で、あるクライアントのお偉いさんをゴルフに誘ったそうなのですが、何とも珍しいことにその方はゴルフをやられないそうで、広告代理店の営業は驚くと同時に困ってしまいました。まさか、昼間から酒ってのも芸が無いし、観光はもう勝手知ったるで意味ないし、接待のやり様がありません。で、営業の部長クラスが何とか知恵を絞ってゴルフに参加してもらうように誘ったそうです。キレイどころのゴルファーとラウンド(これは常套手段)します、とか、これを機会にゴルフをお教えしますからセルフカート(移動用の小型車両)でご一緒に、とか、高級ゴルフ道具を一式プレゼントします、とか。まあ、相手も一応仕事でのことですからそれほど頑なでもなく、ラウンドに付き合うこととなったようです。何でも、そのお偉いさんは営業出身ではなく研究所出身で、ゴルフをやる機会もなく、興味もなかったとかで。まあ、広告のクライアント(殆ど煩悩の塊オヤジ)の中にもそういう人はたまにいます。

で、なんとかクライアントとのゴルフに漕ぎつけたのですが、初ラウンドですし、しかもお歳を少々召されていますから、スコアというか内容は散々で、広告代理店の営業もゴルフを楽しむどころではなかったそうで。ここまでの話なら、楽屋落ちレベルの内輪話です。が、それが妙な展開となったようです。

そのクライアントのお偉いさん、なんと初ラウンドのゴルフで、そのゴルフに「ハマッて」しまったらしく、「こんな楽しいものがあったのか」とかで、滞在期間中、朝から晩までラウンドされたようです。お付き合いで回っていた若手の営業も少々ヘトヘト。ご本人はとにかく、もう、生まれて初めて「楽しい」ことに出会ったかのように、毎日、朝から晩までズッとゴルフ三昧だったそうで…。当然お疲れのご様子ですが、それでも「楽しい」と、ラウンドされていたとか。その様子は、温厚な方だったようですがどこか鬼気迫るようなものがあり、広告代理店の営業も腰が引けてしまうほどの「のめり込み」ようであったそうです。

で、日本に帰り、広告代理店の営業は、そのクライアントのお偉いさんがしばらくして亡くなったという知らせを受けたそうです。心不全だとかなんだとか…。要は、心臓が止まってしまったということです。まさか、ゴルフ疲れではないでしょうけど…。

そのことを私に聞かせてくれた広告代理店の営業がこんなことを言っていました。「あの人は、いままでそれなりに仕事をこなして家庭を持って生きてきたんだろうけど、多分『楽しむ』ってことがあまりない人だったのかも。で、生まれて初めてゴルフって遊びを知って、あまりの楽しさに、『生き急いだ』のかもね」と。私、その「生き急ぐ」という言葉が妙に気にかかって聞き返すと、こう答えました。「もしかしたら、あの人は、自分の寿命がもうあまり長くないことを知っていたのかもしれない。勘みたいなもので。で、残された時間を、初めて知った楽しいものにすべてつぎ込んだのかも…。あのラウンドは異常だったよ。若い者でもへたばるね」。

私の愛用の国語辞典、新解さんに「生き急ぐ」という言葉は載っていません。「死に急ぐ」という言葉はあります。その営業の「生き急ぐ」という言い方は、日本語としては、有りそうで無い言葉なのですが、どうにも「言い得て妙」な言葉だと思います。歳を取ったり、体の具合が思わしくなかったりで、自分の命が「あとどれくらい」と考える時は誰にでもあるでしょう。そんな時、残った時間を縮めてでも「何かに憑り付かれたように」生きている時間を使おうとすることが起きるのでしょうか。おそらく本人はそんなこと、考えてはいないと思いますけど。何かに「呆れるほどに熱中」している人の姿には、そんなことがあるのかもしれません。

自分もかなり「熱中」しやすい方なのですが、確かに、その時は「楽しい」のですけど、どこか「急かされている」ような「もっともっと」とキリもなく求めているような気がすることはあります。そんな時、知らず知らずのうちに「生き急いで」いるのでしょうか。自分に与えられた時間を縮めながら…。話としては他愛もないことかもしれません。しかし、「生き急ぐ」という言葉が、日常的にあり得る、妙に皮膚感覚として現実味のあるものに感じてしまうのです。

「生き急ぐ」とは、「死に急ぐ」なのかもしれません。

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