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怖い その56「憑いてる? 憑いてない? 人間と自然の関係 妖怪」


考える 2016年11月20日の朝日新聞「天声人語」は久々に読んでいて面白かった(失礼)。政治色の強い話題や、訓話的な内容が目立つようになってあまり面白くなくなっていました。昔は、もう少し面白かったのに…(しつこい?)。まあ、面白いかどうかは読む者が決めるわけで、それをもって筆者の力量が云々というのは意味もないことですが、やはり、取り上げるテーマで文章の面白さは決まってくると思います。と、勝手な雑文をWEBに書いている我が身を棚の上に置いといて。

で、何が面白かったかって、自分の不明を恥じる前にただただ「なるほど…」と思ってしまった、出だしです。なにかラッキーなことがあると「ついている」といいますが(最近では、持っている、とも言いますなあ)、これが「憑く」にその言葉の源流があるとは知らなかった。私は、「持っていると」同じ感覚で「付いている」、つまり何かの運が付いているのだと思っていました。それ自体は用法として間違っていないのですが、もともとが「憑いている」となれば、それは魔物や魑魅魍魎か…。その「ついている」が「憑く」という言葉に源流を持つと言われているのは、民俗学者の小松和彦氏。今年度の文化功労者であり、「妖怪文化の研究を通じて人間の在り方を考えてきた」方であるそうです。となれば、当然あの方のことも思い出されます。いわずもがな、水木しげる氏です。

そして、水木しげる氏ともう一人思い出されるのが、東洋大学(かつての哲学館)の創設者、明治時代の哲学者、井上円了。「妖怪学講義」で有名な方です。「お化け博士」「妖怪博士」と呼ばれた方です。井上円了は「迷信を打破するため」に妖怪の研究を始めたようですが、ハマり過ぎてしまったのでしょう。民俗学者の小松和彦さんと、立場は違えど、このお二方にも共通するのは、「人間と自然」の関係を「人間と妖怪」との関係に置き換えているところです。正確に言えば、かつては「自然=妖怪」であり、人間が自分ではどうしようもない自然界の営みに「妖怪」の姿を見出したということでしょう。小松和彦氏の言葉では「変化する狐や狸、河童」などは「自然を妖怪化」したものであるとか。

そうした感受性が「民俗学」「漫画」「哲学」と、それぞれに違う立場の人物に共存したというのは、不謹慎ながら「面白い」。と同時に、私もそうありたいと思っている一人なのですが、「自然に対する畏敬の念」を持ち、同時にそこに「畏怖」という「怖れ」の感情が湧きあがってくるのが、人間と自然との「在るべき」関係だと考えます。かつては、昼と夜は闇で区切られ、そして闇は自然とつながり、神隠し(失踪)や疫病など、人々は「異界の者の仕業」ということで受け入れてきました(納得した)。繰り返しますが、そこには自然に対する「畏敬の念」が、妖怪に対する「畏怖」として存在していたのです。「怖ろしさ」を知るということは、人が人であるために必要不可欠な事であると考えます。そのあたりのことはこの編の、その38「もし、怖いという感情を無くしたとしたら…」に書きましたので、よろしければご覧ください。

そうした健全な「人間と自然」との関係が「都市化」で一変します。闇は失われ、自然は開発という名のもと、人からどんどん遠ざかっていきます。「妖怪を生み出す」自然は失われ、「あるもの」だけが残ります。「幽霊」です。しかし、幽霊は「人」そのものといっても良いかと思います。小松和彦氏の言葉を借りれば「幽霊は人間と人間の関係だけから出てくる。自然との交流がなくなったことを示しています」とか。ブンブンと頷きたい言葉です。天声人語がそれに言葉をつなげます。「人が恐れるのはもはや人だけなのか」と。少々、僭越ながら言葉を加えさせていただきます。「都市社会で人は幽霊程度にしか怖れを持たなくなり、幽霊になる前の人に対して『怖れ』の感情も持ち得なくなっている」。

人が「妖怪」「異界からのチャネル」である自然を失いつつあることは間違いありません。その中で、「畏怖」の念も薄れ、「感受性」も育ちにくくなり、「人と人」という息の詰まるような世界しかなくなってしまっているのでしょう。しかも、あまりにも急速にそれが起こっています。昨今の理解を越えた、「人間の姿がそこに見えない」ような事件を知るたび、陳腐な言葉が浮かんできます。「人間の自己疎外」…。

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