怖い その46「ガラス戸の向こうをフワリと白い何かが…」

その日は見たいテレビ番組も無く、テーブルに座って家人と他愛もない話をしていました。そろそろ眠くなってくる頃です。位置関係を簡単に説明しますと、部屋の出口近くのテーブルに並んで座っていて、出口のガラス戸(ドア)が見える右側(離れている方)に私が座り、ガラス戸と私の間に家人が座っていますから、家人からは振り返らないとガラス戸の方は見えません。私の方は家人の方に顔を向ければその斜め後方に出口であるガラス戸が見えます。その向こうは狭い踊り場になっていて、白いものが向かっていった先は寝室です。
2階にいますから、そのガラス戸の向こうの狭い踊り場に誰かが来るということになれば、階段から上がって来る者ということになります。踊り場を挟んで真向いの部屋は私の書籍や趣味の釣り道具を置いてある納戸のような部屋です。そちらのドアは閉めてあります。
家人と話している時、ハッキリと「流れていくような」「歩いて行くような」「人影のような」「白いものが上下二つのような」感じで寝室の方へ、スーッと半間位のガラス戸の向こうを移動して行きました。この手のものには多少慣れているつもりなのですが、あまりにも至近距離でハッキリと見えたものですから、家人との会話が突然止まります。私の目はガラス戸の方へ。時々、私が妙なものを見るのは家人も知っていますから、またか、といったような顔で表情を曇らせます。
「出たよ、何か…」。時期は新盆(7月13日~15日)を数日過ぎた頃。オガラ(麻の茎を乾燥させたもの)を焼いての「迎え・送り火」はもうとっくに終わっているのに…、故人がやってきたのでしょうか? 時差ボケでも起こして…。
そうした事に多少は慣れているとはいえ、決して平気ではなく、当然「怖い」のです。しばらく、ガラス戸を見つめていましたが、その白いものはもう見えません。動きから考えて、寝室の方に行った筈です。寝室のドアは夏の熱気がこもらないように開けてあります。「見なかった事にしよう」としたい所ですが、寝室ですから、行かない訳にも行きません。意を決してガラス戸を開け、暗い寝室で目を凝らしますが、当然真っ暗です。明かりを点けて床から天井までを見渡しますが、何もいません。
とはいえ、そこで寝るわけです。いつも私の方が先に寝床に入るので、とにかく早く寝てしまうに限ります。布団に入って目を閉じますが、開けるのが怖い…。もしそこに何かいたら…。しかし、日頃の規則正しい生活のおかげか、即、眠りに落ちました。次の日の朝、家人と一階で寝ている年寄りに、何か出なかったかと聞きましたが、みな熟睡したそうです。私は何かが夢枕にでも立つのでは、と思っていたのですが、何もありませんでした。
では、あれは何だったのでしょうか? と、いつも何か妙なものを見たりすると考えるのですが、毎度、結局は答えなんかありません。部屋のカーテンは閉めてあるし、外の光は入って来ません。それに、そこを通るものが家の中にはいません。しかし、2つに見えたような白いものとしか表現しきれませんが、フワリとその狭い踊り場を横切ったのです。別に光ってはいません。家は古いとはいえ、普通の建売住宅です。いわくつきの家でも何でもありません。
まあ、数年前に亡くなった家人の母親が、途中で帰り道を間違って出てきたのかと云うことで予定調和的な笑えない笑い話で終わりですが、とにかく、至近距離であれほどハッキリと見たのは、久しぶり。まあ、説明などつく訳もありません。しばらくは寝室が怖かった。
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