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怖い その45「思い出せない記憶 思い出してはいけない記憶が騒ぐのか」


夏目漱石の「夢十夜」という作品をご存知でしょうか。「こんな夢を見た」で始まる掌編が第一夜から第十夜まで十編書かれています。この作品を元にしたオムニバス映画や、黒沢明監督の映画「夢」でモチーフとされています。黒沢明監督の夢は八話で、これは監督自身が見た夢を描いています。出だしの「こんな夢を見た」は漱石の作品から拝借したものです。

作品のネタバレになるようなことは極力避けますが、第一夜は「男女の捉えどころのない(愛)情、関わり」、第二夜は「レゾンデートル、当為(そうあるべき事)、自己の存在意義」のようなものがテーマであると感じます。私が一番記憶に残っているのは第十夜で、これは「不条理」がテーマでしょう。豚に舐められる話です。夢なるものを深読みしたり(真摯な意味で)弄んだりすることは戒めるべきと考えているのですが、この夢十夜の中で特に第三夜に描かれた話には何故かゾッとするのです。

知り合いにも同じようなことをこの第三夜に感じてしまうという者がいました。ここでテーマにされているものは「業、原罪」といったものでしょうか。

何故か、何度も何度も夢に見てしまうものってありませんか? もちろん、どれもが寸分たがわず、ビデオの再生のように同じものではないのですが、その夢を見た時に感じてしまうものが同じなのです。その感じを言葉に表現すれば「そうだ、俺は…、だった…」、もしくは「そうだよ、…を忘れていた」です。漠としていますが、何かを思い出したような感覚なのですが、それが何であるのか分かりません。まあ、夢ですから現実の生活に支障をきたすものではありませんが、何故か「怖さ」を伴ってしまうのです。どうして「怖い」のでしょうか…。

夢の中で思い出すのですけれども、覚えていない。いささか悶々とした思いです。それは、もしかしたら、「思い出してはいけない事」なのでしょうか? しかし、思い出してはいけないのに、その記憶が、睡眠中の「夢」という力を借りて現れようとしているのでしょうか? それはいったい、何なのでしょうか? 

私は「前世」とか「来世」とか云ったものを具体的にどうとも思っていません。しかし、「命の再生産システム」として「輪廻転生」というものは概念として否定しません。それが無ければ、この連綿とつながる命というものに納得のいく考えを持てないからです。であれば、その「夢」の中で騒ぐ「記憶」は、今ではなく、その転生の中にあるものなのかもしれない、と考えてしまいます。あえてそこで「前世・来世」といった言葉を使うとすれば、そこに何か思い出してはいけない「怖い」ものがあるのでしょう。考えとして、というより感情としてそれを否定ができないのです。

夢十夜の第三夜はバクッと云えば、子供を背負って彷徨っている男が辿りついたのは、かつて(前世?)自分が人を殺めた場所であり、背中に背負っていた子供がその相手であるという話です。男は最後にその事を忽然と自覚するのです。

この話には、なんとも冷や汗がべっとり貼りついてくるような読後感を覚えるのです。

私がよく見る夢を類型的に表現すれば、まず見知らぬ土地、家があって、それらは全て朽ち廃れています。そして、ある廃屋に入った時、部屋は埃だらけで様々な物が転がっています。本であったり、生活用具であったり、時には古いパソコンであったりします。それらを一つ一つ眺めている時に、その「何か」を思い出したような感じに襲われるのです。それは決してハッピーなものではなく、後悔、怖れ、懺悔、謝罪、それらを混ぜ合わせたようなものです。

何故かは、当然分かりませんし、自分でも説明がつきません。今の自分は誓って法に背くような事も、人から恐ろしいほどに恨まれることも行ってはいません。人を不愉快にさせたことはあるでしょうが、それは日常的な些事の部類であり、当然、記憶にあります。

私は特定の宗教に属する者ではありませんが、やはり人には仏教で云う「業」、キリスト教で云う「原罪」のようなものがあるのでしょうか。芥川龍之介の言葉に「薄ぼんやりとした不安」というものがありますが、我々は常にそうした「不安」の上に座らされているのでしょうか。

何やら話が深刻なくだりになってしまいましたが、そこに感じる「怖さ」というものは、拭い去れないでしょうね。ということは、「不安・怖さ」などと云ったものと上手くお付き合いしていくことが人には必要なのかも…。

ひとつ、そうした事への対応策があります。ご提案でもないですけど、「生かされている自分は、何が何でもハッピーである!」と言い張ることでしょう。

え…? 意味不明? いいんです。分からない事なんですから。

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