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怖い その4「人が一番怖いもの それは窓…」


窓「人が一番怖いもの」とは随分勝手な決めつけ方、との反論もおありかと思います。そんなものは人それぞれで、何で「窓」なんだよ、と言われればごもっともです。ただ「怖い」という感情の根本を考えていると、そこへ行きついてしまったのです。「窓」というのは象徴的なものとしてご了解ください。

では、何故そういう考え、思いに至ったかを書きます。

発端は、タイトルを思い出せないのですが、ヒッチコックの古い短編オムニバス映画(白黒)をテレビで見た時の事です。自分がいくつくらいの時か忘れましたが、多分、学生の頃だったかと思います。4編のオムニバス映画です。深夜に一人、アパートで見ていたと記憶していますが、その中のひとつに、詳細な筋立てのようなものは忘れました(特になかったような…)が、確か、こんな話だったと思います。以下、思い出しながら書きます。

アメリカから一人のビジネスマン(だったかな…)がヨーロッパのどこかの国を訪れ、飛行機から降りて空港の中を歩いていくところから始まりました。

ビジネスマンが空港の通路を歩いていると、その途中に毬をついて遊んでいる小さな女の子がいました。そのビジネスマンは子供を微笑ましい顔で一瞥します。そしてその脇を通り過ぎ、下りのエスカレーターへと向かいます。エスカレーターを降りて行くビジネスマン(以下、A氏とします)がふと下を見やると、そこに女の子が毬をついている姿が目に入りました。そこでA氏の表情が訝しげなものに変わります。さっき見たのと同じ子のように見えます。A氏は真顔でその女の子を一瞥して脇を通り過ぎて行きます。振り返ると女の子は無心で毬をついています。不可解そうな表情を見せて通関に向かうA氏。

そして、通関してタクシー乗り場に向かおうとすると空港の出口で、またあの女の子が毬をついて遊んでいます。A氏の足が止まり、その顔が怪訝そうに曇ります。そして、またその女の子を一瞥して脇を通り過ぎタクシー乗り場へと向かいます。タクシー乗り場に立って振り返ると出入り口の脇で女の子がまだ毬をついています。

タクシーが来ました。A氏がタクシーへの乗り際に空港の出入り口を見やると相変わらず女の子はまだ毬をついてひとり遊んでいます。A氏は怪訝そうな顔でタクシーの運転手に尋ねます。「この国では毬つきが流行っているみたいだね」と。タクシー運転手、その質問に拍子抜けたような表情でぞんざいに答えます。「そうですかい。俺は知らねえけど」。A氏、何かを言おうとして空港の入り口を見やると、そこにはあの毬をついている女の子の姿はありませんでした。呆けたような表情であの女の子を目で探すA氏。タクシーの運転手に促されて、目的のホテルの名を告げます。タクシーが走り出し、座席に体を沈めて不可解そうな表情で宙を見つめるA氏。

既に辺りは夜。ホテルに付き、チェックインを済ませ、部屋に向かおうとするA氏。エレベーターを降り、部屋に向かう廊下で、なんとあの女の子が毬をついています。A氏の顔に怯えのような表情が浮かびます。足を止めてその姿を見つめているA氏。ついに意を決したように、その女の子に呼びかけようとします。すると毬をつきながら女の子は向こうへ行ってしまいます。呆けたような表情のA氏。気を取り直してホテルの部屋に入って行きます。

部屋でシャワーを浴び、バスローブ姿で冷蔵庫からお酒を取り出し、振り向くと、そこにまたあの毬をついている女の子の姿。部屋の中です。さすがに凍りついた表情のA氏。何かを叫ぼうとします。そして、女の子を恐れるように見つめながらソファーに座り、酒を煽りはじめました。
妙なシーンです。恐れるような顔で酒を煽っているA氏の目の前で毬をついている女の子。この辺りで、その映画を見ている私は充分に怖くなってきました。ヒッチコック一流の手法でしょうか、その短編に台詞らしきものは殆どなく、淡々と話が進んでいきます。その中で変わって行くのはA氏の表情のみ…。

堪り兼ねたようにソファーから腰を浮かせ、女の子に話しかけようとするA氏。その瞬間、女の子は毬をつくのを止め、毬を手にしてA氏に向かって可愛らしい顔で微笑みかけます。目を剥いて言葉を失い、ソファーに崩れ落ちるA氏。悶えるようにして頭を抱え込み、女の子の方へ恐怖に固まった顔を向けます。が、そこには誰もいません。あの女の子の姿は消えてます。もう、見ている私は怖かった。しかし、その映画のラストシーンが気にかかり、続けて見ました。

疲れたようにベッドに崩れ落ちるA氏。疲労困憊の表情で寝入ろうとしますが、なかなか寝付けない。そして耐えきれないような悩ましい表情で部屋を見回します。ふと、その目が部屋の窓に。するとそこには、あの女の子の顔。可愛らしい微笑みとは真逆の無表情な顔、恨みで突き刺すような瞳を窓の外からA氏に向けています。凍りついたようなA氏の顔。そこでその映画は終わりです。話としてはそれだけの映画なのですけど…。以上、思い出しながら書きました。

私、その時、とてつもなく怖くなりました。しかも夜、一人。テレビを消して布団の中に潜り込み、とにかく寝てしまおうとしましたが、寝付けません。窓の方が気になったのですが、見れる訳ありません。

ヒッチコックの手腕でしょうが筋立ても背景も何も分かりませんが、とにかく怖さだけは人の心に知らずのうちに植え付けていきます。してやられたような気分になりました。

ラストのモチーフ、窓…。それは外界と自分とをつなげる経路です。そこから何かがやってくる。外界から自分の中へ。それが恐怖の象徴なのでしょう。それからしばらく窓の方を見るのが怖くなりました。特に夜。今でもややそうなのですが…。

理屈はともかく、試しに夜、窓をジッと見てみてください。もし、そこに怖さを感じたとしたら、その怖さは自分自身が抱えているあらゆる外界に対する怖さが様々な形で現れるからでしょう。

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