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怖い その34「猫は可愛いのですけど…」


猫本サイトの「不思議その41」で、私が(けっこう)昔、「物を書く」事で飯を食っていたころに書きためておいた「プロット(ストーリーの構成)」を、全て捨ててしまった事を書き、その中でもいまだに頭の中に残っているものを厚かましくも書いてしまいました。が、まだ少し残っているものもありますので、また厚かましく、書きます。あちらは「不思議」がテーマでしたが、こちらは「怖い」です。「怖い」はネタの宝庫です。怖いといっても色々なものがありますけど、心霊ものではありません。実は、筒井康隆の短編にヒントを得たのですが、「パクリ」とも言います。が、商業的な場では書いていませんので無実です。

-----------(ここから)-----------
最近はこの町もかなりロートル化が進んできた。若い者はみな町を離れ、年寄りばかりが町に残ってしまう。どこの地方も同じだろうが、ここも昔は新興住宅街ということで、けっこう賑わっていたのだが…。
そういう俺も、けっこう歳を取ってしまった。女房をすでに亡くして、子供も自分の生活を持ち、年に数回程度は顔を見せるが、それだけの事で、今はシャッター街と化した商店街で、もういつ畳んでもおかしくないラーメン屋を営みながら、気楽に一人暮らしを楽しんでいる。一人でいるのもそれほど悪くない事だ。
俺の店からは少し離れているが、歩いて行ける距離に、もうとっくに潰れて、廃屋のようになっている美容室がある。まだ賑やかだった頃には羽振りも良く、店舗と住宅兼用の駐車スペースには高級車が停まっていた。今は、その高級車も錆だらけで、クルマの下は野良猫の棲家になっている。いつも10匹はいるだろうか。多い時にはもっといるかもしれない。ここの家も女房に先立たれた元サラリーマンの爺さんが、俺と同じように一人で暮らしている。殆ど付き合いもないので話をする事も無い。かつて女房が経営していた美容室は蔦に絡まれ、傾きかけている。
そこで一人暮らししている爺さんは猫好きらしく、魚を買ってきては野良猫に食べさせている。だからここに猫が集まるのだ。近所に猫嫌いがいたら、揉めるだろうな、なんて思いながら、時々、その前を通る。この爺さんが面白いのは、餌の魚を家の軒先で七輪を使って焼いて猫に与えている事だ。当然、「猫舌」の猫は喰いづらそうにしている。喰い物は「焼く」ものと単純にそう思っているのだろうか。人に対するように。
その日は客も少なかったので早目に店を閉めて帰る事にした。家への帰り道コースはいくつかあるが、今日はたまたまあの「猫爺さん」の家の前を通って帰った。例の如く、爺さんが七輪で魚を焼いて猫に喰わせている。わざわざ七輪で焼かなくたって、生でやればいいのに、と思いながらその様子を見ていると、ふと、猫爺さんと目が合った。俺が軽く会釈をすると、向こうもそれに応えて会釈したが、別に言葉を交わすことは無い。ただ、その猫爺さんの横顔を見た時、その顔色の悪さに気付いた。頬も痩せこけている。病気か…? とはいえ、もう十分な歳で、どこも悪くないという事はないだろう。俺だって同じ…。この町にはそういった人生の斜陽を迎えた者ばかりが残っている。
もう店は畳むか…。そんな事を考えながら、最近は早仕舞いが続いている。何となくあの猫爺さんの事が気になって、そちらの方から帰る事にした。廃屋の美容室が近づいて来る。しかし、いつもこの時間には七輪で猫の餌を焼いている爺さんの姿が見えない。猫どもは、餌を待って集まっている。十数匹はいる。だが、いつも餌をくれる爺さんの姿はない。やはり、病気か…。猫どもが俺の姿を見て、ニャーニャーと騒ぐが、俺には関係ない。一人暮らしの爺さんに何かあれば、市の職員が何とかするだろう…。猫どもの泣き声を後にして家に向かった。いずれは皆、最期を迎える。特別な事じゃない。いつどこで倒れたっておかしくないさ。
もう一週間。相変わらず、あの猫爺さんの姿はない。別に心配をしても仕方ないのだが、入院でもしているのだろう。昨日までは餌を待っていた猫どもの姿も無い。薄情なものだ。餌を貰えないのでどこかへ散ってしまったか…。まあ、人も同じようなもの。猫爺さんの家の前を立ち去ろうとする時、家の中から、猫のくぐもったような鳴き声が聞こえた。それも、一匹ではない…。
俺は踵を返して、猫爺さんの家のドアを叩いた。鍵はかかっていなかった。ドアを開けるとそこは台所。何匹もの猫が、山のように集まって、何かを喰っている。俺の背中一面に粟粒が立った。
「猫は…、もともと肉食…」。
-----------(ここまで)-----------

えー、おあとがよろしいようで。「不思議その41」で書いたように、プロットですから完全なものではありません。

筒井康隆の作品では猫ではなく「狸」でしたが、こいつも肉食です。あちらは宇宙船の中が舞台でしたから、まあ、パクリではないですね。しかし、猫なんてのは可愛いものと思われるでしょうが、田舎育ちの私は、青大将(蛇)と戦う猫の姿や、猫がネズミを頭からボリボリ(まさにそのような音がするのです)と「痛快まるかじり!(知ってる…?)」で喰っている姿も特に珍しいものではありませんでした。

他の動物をペットとして「愛玩」するのは人間だけでしょう。それは、感情移入の力がなせる業だと思いますが、猫の親戚にはライオンやトラもいます。犬だってオオカミやハイエナが親戚にいます。やつらは、本来、獣です。人間もそうでしょうね。

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