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怖い その13「焼却炉から赤ん坊の骨… そして、泣き声…①」


焼却炉大学生の確か3年の時だったと思いますが、同じアパートに住む大学の先輩から「夜警のバイト」のピンチヒッターを頼まれました。あまり気が進まなかったのですが、夜中の数回の見回りだけで、後は暇だから本でも読んでいればいい、というのが少し魅力的で二ヶ月間だけの約束で引き受けました。

その先輩も三か月の短期のバイトということで探してきたらしいのですが、一ヶ月で事情ができて、残りの二ヶ月がバイトできなくなったから、代わりに頼むという事でしたけど、その事情というのがちょっとアヤフヤ…。単位が危ないから集中して勉強するという事でした。その時、なんか変だなと気が付けばよかったのですが、それなら最初からバイトなんかしなければいいのにと後になって思いました。単位が危ないって、いくらなんでも一ヶ月で急にそうなる訳ないだろうし…。

まあ、結局は引き受けてしまい、二ヶ月間夜警です。夜警の仕事場は古いビルで、ある公共の法人が借りていて、二ヶ月後にはそのビルを出るという事でした。何でも一度、一階が火事になって、いずれは建て直す予定のビルを安く一時的に借りているそうで。夜警の常駐する部屋はその火事になった一階部分の焼けた倉庫の手前の部屋。一階はすべて倉庫だったらしく、その部屋は二十畳以上はありそうな広い部屋。そこに畳が敷いてありましたが、やはり火事が出た後に安く借りていた会社があったらしく、その会社が残して行った部屋だそうです。

何に使っていたのか、従業員が寝泊まりしていたのでしょうか。工務店か何かだったのでしょうか。とにかくそこが私の寝泊まりする部屋でした。部屋の中には机と電話、貸布団が一人分置いてあるだけのだだっ広い部屋です。何となく落ち着きませんが、とにもかくにも夜警のバイトの始まりです。

確かに仕事自体は楽でした。午後六時から、一時間おきにビルの各階を巡回し、午前二時に巡回終了。それで朝八時までは寝る事ができます。毎日日誌をつけますが、殆ど「異常無し」で終わり。それ以外の時間は確かに部屋で何をしても自由。ただし、緊急連絡があった場合に備えて、当然外には出られませんから、夕食は弁当を買っておきます。休みは日曜日。慣れるまでは真っ暗な夜のビルを巡回するのがおっかなかったのですが、一週間くらいで段々と慣れてきました。確かに本が好きなだけ読めるのですが、本を読むくらいしかないとも言えます。何か異常があったらすぐに気が付くよう、ラジオもテレビもご法度。

ある晩、巡回を終えて、さあ、寝ようかと思って布団に入ると、ある音に気が付きました。いや、音ではありません。声です…。いや、声というより、赤ん坊の泣き声です。隣の元倉庫だった部屋から聞こえてきます。ハッキリと聞こえます。その倉庫、火事の時に黒こげになったまま放置されているそうで、今は何にも使っておらず、私も中に入った事はありません。でも、壁を隔てて隣りなのです。赤ん坊が泣きじゃくる合間にヒクヒクと息を継ぐ音までハッキリと聞こえてきます。いつもは何も聞こえないのに…。

さすがに、自慢じゃないですけど、不思議な経験、怖い経験を多々味わってきたことがある私も、これは怖い…。隣の部屋に行って確認したいという衝動はありましたが、どう考えても赤ん坊の声が聞こえてくるような場所ではありません。近所の赤ちゃんが泣いているのだろう、と自分を納得させようとしますが、周りに人家は無く、同じようなビルが立ち並んでいます。明日、明るくなって調べてみよう、とその日は布団の中に縮こまって寝ました。赤ちゃんの泣き声は、ハッキリと聞こえています。もう、マッツァオ状態です。

何とか寝る事はできましたが熟睡はできていなかったと思います。次の朝、寝ぼけ眼で起きて、隣りの部屋のドアを恐々と開けました。部屋の中を見て、ある意味、驚きました。火事のあった跡がそのままで、壁も天井も煤で真っ黒のまま。倉庫だったのでしょうが今は何もありません。窓はベニヤ板でふさがれ、換気扇も真っ黒。床には何かが焼けたゴミがこびりつくように残っていました。

なるほど、本当に火事があったんだ、と納得する風景の倉庫です。しかし、あの赤ん坊の泣き声は何だったのか。当たり前ですが、とても赤ん坊がいられるような場所ではありません。

その日、夜警のバイト、どうしようかと悩みました。引き受けてしまった以上はこんな事を理由にして断るのもなあ…。参った…。

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