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怖い その11「通夜の夜、叔母の棺桶からブツブツと声が…」


黄昏私の母方の実家は典型的な女系家族で、叔母は何人もいたのですが、母親が一番下の子で、すぐその上の姉の叔母には子供が無く(幼いころに亡くなりました)、甥である私の面倒を子供の頃、何かと見てくれ、高校生の時まで小遣いをもらっていました。自分が歳を取るという事は、多くの人の死に目に会う事なんだなと思います。叔母たちも上から順に亡くなって行きます。順番通りに逝くというのは(不謹慎な表現ながら)良い事なのかもしれませんが、一人になってしまった叔母も亡くなってしまいました。

病院に入院している時から何度か瀬戸内海の某地方都市までこちら(関東)から戻っていました。そして、危篤という知らせで急ぎ戻ったのですが、間に合わず、亡くなったという事は新幹線の中、携帯電話への連絡で知りました。叔母には子供がいなかったので妹であるうちの母親が葬式の手配をすることになりましたが、如何せん、こちらも歳ですし、うちも女ばかりで男は私一人。何だかんだ言っても、私の方で実質、葬式を仕切る事になりました。

悲しいかな、もう父親の葬式も経験したし、何度も人の葬式を手伝って、葬式慣れしていましたし、良く考えると礼服に白いネクタイをしたのはいつだったか、ずっと黒いネクタイばかりです。歳を取るというのはそういう事なのでしょう。

それはともかく、葬式というのは、悲しんでいる暇などありません。次から次へ色々な手続きや手配の連続です。で、斎場の都合で会場が取れず、仮通夜そして通夜ということで叔母の仏さんと三晩、一緒に過ごしました。

仮通夜が終わって、通夜が終わり、明日が本葬です。斎場の一室を借り、もうその時はうちの女どもも疲れたのか、家に引き上げ、私一人、仏さんを一人にしておく訳にもいかず、その一室に仏さんとご一緒、三晩目です。いくら世話になった叔母とはいえ、もう亡骸ですから、その棺桶とサシでまた一晩というのは、疲れもありますが、オイオイってな気分です。

斎場にホテル並みの宿泊施設がありますから、ひとっ風呂浴びて、後は酒を呑むしかありません。ある程度酔いが回ってきた時、昔の事を思い出し始めました。叔母はうちの母親と一緒でけっこうテキトーな性格でした。子供の頃、手を切って怪我をしたとき、傷口にセロテープを貼られたことがあります。そりゃ、確かに傷口は塞げるけど、ガーゼとか包帯とか…。欠点は文句が多い所。何かにつけてブツブツと言っていました。

私は仏さんを前にひたすら酒を呑み続け、線香を取り換えていました。昔は一本タイプの線香だったので交換するのに忙しなかったのですが、今は蚊取り線香のような、まさに線香があり、燃え尽きるまでに時間が相当かかりますから、線香を替えるのも楽です。しかし、いいのかね、こんな蚊取り線香みたいな線香で。もちろん、蚊には効かないと思いますが。

呑み疲れて、ふと寝てしまいました。そして、真夜中に目を覚ましたのですが、何やら人の声がします。「なんじゃ?」と思って声のする方を見ると、なんと、叔母の棺桶の中から聞こえます。「え…」。なにやら、ハッキリとは聞こえないのですがブツブツと言っています。しばらく唖然として、それを聞いていたのですが、間違いなく棺桶の中の叔母がブツブツと言っています。「ちょと、勘弁せえや…(方言)」。酔いが一発で飛びました。怖いなんてもんじゃないですよ。静かな夜の斎場の一室で、棺桶の中でブツブツと言っている叔母の声を聴いている私。

酒を冷蔵庫から取ってきて、また呑み始めます。呑むしかないでしょう。叔母のブツブツはまだ止まりません。私、ハイピッチで酒を呑み、一気に酔おうとしますが酔えません。もう怖いのを超えてきました。冗談の一つでも言わないと気が持ちません。「生きとる時から、よう文句たれよったが、死んでまでブツブツ言うとるで、こんには(こいつは)…(瀬戸内海沿岸某地方の方言)」。

私、怖さを超えて、何やら腹立たしくなってきました。そんなものです、人の感情は。度胸を決めて、棺桶の顔の所の窓をエイヤッと開けました! そこには静かに眠る死に化粧の叔母の顔。私、座り込みました。まだ聞こえているのです。そのブツブツという声が棺桶から。訳が分かりませんが、だんだんと更に腹が立ってきました。「なんなんじゃ、こりゃ!」。

で、ふと思い立ち、部屋の外に出ました。夜の斎場ですから静かです。と思いきや、遠くで何やら人の話し声が聞こえます。声を潜めて何かを言い合っているような感じです。私のいる部屋から3つくらい離れたところ。その前まで行ってみると確かに、複数の女性が押し殺した声で言い合いをしています。

私、部屋に戻って棺桶からまだ聞こえてくるブツブツ声を確認しました。「なるほどのう…」。力が抜けました。3つ先で人が話している声が、どういう経路か反響して、なんとこの部屋の棺桶の辺りから聞こえていたのです。怖さも原因が分かればいきなりどうでもよくなります。グタッとしてそのまま横になりました。棺桶からはまだブツブツと声が聞こえてきます。「はよ寝んかい…」。そのうちに私は寝てしまいました。

次の日は本葬です。見事に二日酔いです。葬式が終わって、昨夜の事を母親に話しました。母親は笑いもせず、真面目な顔で答えて曰く、「そりゃ分からんで。こんにのことじゃけ、ホンマにブツブツ言うとったんじゃろう」。

私、酔いと、昨夜の怖さの緊張感と、葬式が終わった疲れで疲労困憊。
もうどうでもいいです…。

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