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怖い その10「幽霊? 夜に出て来るだけじゃないのか…」


学校前編に続いて子供の幽霊の話なんですけど、見た本人の記憶によってはどうにでも取れる話です。私が東京に出てきたばかりの頃、学生時代に新聞配達のアルバイトをしていた時の同じ専売所の同僚から聞いた話なのですけど…。

その者を仮にAとします。Aは東北から東京での浪人生活を選択してこちらでバイトしながら予備校に通っていたのですが、地元の東北では旧制一高を出た、なかなかに聡明な男でした。性格は私と違って温厚そのもの。別に人物評をしたい訳ではないですが、いわゆる秀才なのですけど、どうも競争という環境には弱いタイプみたいです。人には色々ありますが、競争すると強い人、競争させると弱いけど、一人でコツコツとやらせると良い仕事をする人。Aは後者のタイプです。専売所での仕事も、特に人と交わる事もあまりなく、真面目にこなしていました。

そんなタイプですから、私もあまり話をしたことが無かったのですけど、専売所対抗の野球大会がありまして、その時にAが足を挫いてしばらく動けない時、特に見舞いという訳ではないのですが、部屋を尋ねる機会がありました。それで、話をしてみるとなかなかに気のいい面白い男で、そこは若い時分ですから脈絡もなく話が続きます。

そのA、怪我をして気弱になっているのか、里心が出始めたのか、故郷の話をし始めました。子供好きであると言う事はその時に知ったのですが、そういえば近所の子供とはよく遊んでいたような…。それで、高校時代は下宿生活で、そこには風呂が無く、普段は流しの水道で髪や体を洗っていたようですが、気が向いた時にはたまに銭湯に通っていたそうです。私も学生時代は同じです。銭湯代を浮かせるために。

ある日、学校から帰って、まだ日が明るい時間、下宿から銭湯までは少々距離があり、洗面道具を抱えて、ちょうど橋が架かっている辺りに差し掛かった時、よく遊んでいた子供が向こうから走ってきて、「急いでどこへ行くの」と声をかけたそうですが、その子供は足も止めず、そのまま走り去っていったそうです。Aはその時、何だか様子が変だなとは思ったようです。

それからしばらくして(この、しばらく、が問題なのですが…)、あの銭湯に行く時、橋で会った子供が亡くなっていた事を知ったとの事です。病気ではなく、事故だったそうです。日にちを聞くと、あの橋ですれ違った前日という事です。と言う事は…。

しかし、Aはそれを知って仰天すると同時に、その日にちに確信が持てません。が、思い出そうとすれば、どうしてもあの日はその子供の亡くなった次の日だったと思えるそうです。自分もちょっと前の事になると、それが何日だったかなんて、けっこういい加減に覚えているものですが。
それとAは、会うといつもジャレ合うあの子供が、その時はまるで自分を無視するように走って行った事を不思議に思っていました。「あんな、一言も言わずに行ってしまう事なんて、今までなかったのに…」。

そのことは未だにAの中でわだかまりのように残っている思いだそうです。Aはこう言いました。「信じてもらえなくてもいいし、証明のしようが無いんだけど、あの子に会ったのは、やっぱり、亡くなった次の日なんだ」。ちなみに、Aは東北出身で、言葉に訛がありますが、文字では表現できません。しかし、東北訛独特の純朴さというか、滔々と話すその語り口には妙なリアリティがあります。

Aが足を挫いた事をきっかけにそんな話を聞きました。冒頭に書きましたが、この話は本人の記憶次第で、普通の事にもなり、怖い話にもなります。しかし、私はジワリと怖くなってきました。これは文字にしにくいのですが、Aの朴訥な語り口です。作り話をして面白がるようなタイプの男ではありません。

Aはその後、東京での受験に失敗して、その後、東京にとどまったのか、故郷に帰ったのか分かりません。

私は未だに彼から聞いた話をそのまま受け止めています。信じるとか信じないとか関係ありません。まだ明るい時分に、Aの脇を駆け抜けて行った子供。普通の光景と言えばそれまで。しかし、Aの語り口とともに、妙に記憶に残っている話です、これは…。

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