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不思議 その9「ボロアパート物語、そして誰もいなくなった…②」


お札またある日の夜、いつものように3人集まってダベッていました。ここで、話を進めるうえでややこしくならないよう、その溜まり場の住人をA、もう1人の同じアパートの違う棟に住んでいる友人をBとします。

私がAの部屋に行ったのはその時、夜7時過ぎくらいだったと思います。別の話にも書きましたが、このころ私は新聞配達のバイトをしていましたので、夕刊配達の後、専売所で夕食を食べ(配達がある時は朝夕、食事を食べさせてもらえます)、折り込み広告の整理(これが結構大変。今は機械でやるようですが、その当時は手作業)を終え、その日は折り込み広告の量も少なかったので、比較的早い時間に遊びに行きました。AとBは自炊で、食事の最中。

その後はいつものオチャケタイム。すると、通路側のドアをノックする音が。一瞬、3人ともビクッとしましたが、ノックの後に人の声。「すいません」。ドアを開けると、声の主はその隣に最近越してきたという、秋田から出てきて専門学校に通っているという青年。その青年が、引っ越しの挨拶という事で酒と、確か魚の干物を持ってきました。もう我々としては大歓迎。話の整理上、彼をCとします。

そのC、引っ越してきたのは2週間くらい前だそうですけど、隣りで我々が毎日騒いでいるのが気にかかったのか、挨拶に来たとの事です。やはり、地方から出てきて1人は寂しいものです。Cとは歳が一緒だったので、すぐに打ち解けて、酒盛りの開始です。若いのが集まって、酒が入れば下らぬ話で盛り上がります。西の方言と東の方言が混じって、話は尽きません。で、ひとしきり話が盛り上がり、私は次の日の朝刊配達があるので、名残惜しくはありましたが、そろそろ帰らなければなりませんでした。本当はまだ一緒に騒いでいたいのですけど。

最期の酒を煽って、帰ろうとした時、Cが真顔でAに言いました。「あの…、夜、時々、ドアをノックされることがありませんか…」。朴訥な感じのそのCの言葉にAの顔色が変わります。その部屋の通路側のドアとCの部屋のドアとは直角の関係です。どこかでCは我々がいたずらしているのでは、と思っていたようですが、それは無い。我々も、Cの部屋の住人(以前は親交がありませんでしたから)がいたずらしているのかと思っていた訳ですから。

急に部屋の空気が重くなりました。とはいえ、私はそろそろ引き上げないといけないので、腰を上げながら「まあ、今度ノックの音が聞こえたら、すぐにドアを開けて見たろうで。のう。(方言)」、とテキトーなことを言ってその日は帰りました。

実は、私とBはそのドアがノックされる音を聞いたことがありません。ですから、ちょっと薄気味は悪いのですが、現実感がイマイチありません。しかし、両隣がノックされている訳ですから、やはり何かが…。怖いと言えば怖い。訳が分からないと言えば訳が分からない。

それからもCを加えて4人で遊んでいましたが、例のノックの音はしばらく、しなくなったそうです。結局、古い建物ですから、キシミか何かがそういう音に聞こえるのだろうという結論となり、みな忘れていました。

で、ある日の夜、その日は折り込み広告の量が多く、けっこう遅い時間にAの部屋に遊びに行きました。部屋のドアを開けると、A、B、Cの3人が暗い顔でこちらを振り向きます。私、訝しく思い「どしたんなら?そがあな…」、そう言いかけるとBが真っ青(本当に人の顔は真っ青になるんです)な顔をして、一言。「出たんじゃ…」。私、「ああ? 何がや…」。

その晩、3人で一緒に自炊して飯を食った後、酒を飲んでいた時に、例のノックする音が久々に聞こえたそうです。AとCはビクッとして、そのノックの音を初めてきいたBが覚悟を決めて、ドアの鍵穴(ちょっと情けない。ドアを開ければいいのに…)から、通路を覗いたそうです。昔のドアの鍵穴は覗けるくらい大きいというか、大雑把な作りで、今の鍵穴とは違います。そうしたら、ドアから少し離れたところに女性の姿が見えたそうです。ギョッとしたBが「女がおる…」と言って、鍵穴から離れると、Cが代わって恐々、鍵穴を覗いたそうです。確かに女性が少し離れた所に立っていて、そして、部屋が並んでいる側とは反対側の一階の物干し場の方へ出て行ったということです。

なんで女がいて人の部屋をノックして物干し場の方に行くのか? 3人は勇を鼓舞してドアを開け、物干し場を覗きに行ったそうです。すると、誰もそこにはいません。物干し場のガラス戸も閉まっていたそうです。で、部屋に戻って、3人とも真っ青になってしまったという事です。

そこへちょうど私が来た訳ですが、それを聞いて私も物干し場に行ってみました。確かにガラス戸は閉まっています。物干し場に人影はなく、そこはブロック塀に囲まれて、外には出られません。で、物干し場のガラス戸を開けて見ました。昔の建物をご存知の方はお分かりになると思いますが、ガラス窓の引き戸は建付けが悪く、ガラガラと大きな音を立てて開きます。

おかしな話です。Cが言うように、その女が物干し場に行ったのなら、この大きなガラガラというガラス戸を開ける音が聞こえるはずです。しかし、誰もそんな音は聞いていません。私、Cに向かって(怖いけど)冗談っぽく「ホンマにおったんか(いたのか)、そがあな女が…」。するとCはBを見やって、「ふたりが見たんだから…」。それは確かに…。Aは一言もなく表情が固まっています。

その晩は誰も自分の部屋に帰ることができず、4人で一緒にいました。私もそこから早朝、専売所に出かけました。

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