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不思議 その40「寝ている真横に爆弾 不発で命拾い しかし…」


戦場この話に脈絡はありません。しかし、子供のころから何故かひとつながりになって、いまだに私の頭の中に不思議な感覚で残っています。身内ネタで恐縮なのですが、私の親父は戦争に行って台湾で終戦を迎えました。私が生まれる十ン年前の事ですけど。ちなみに、親父は戦前の高等教育を受け(地方では恵まれた少数派)、銀行に就職しましたが、赤紙一発で召集。自分の父親ですから遠慮もいらないのですが、私が覚えている親父はいい加減な男で、その高等教育と銀行にいたというのが全く結びつかないような、生活力0の男でした。私が若いころに亡くしましたが。

その親父から子供の頃、何回か聞かされていた話ですけど、呑みながら独り言のように話していました。ちなみに、大酒呑みで、それは私に遺伝しています。で、どのような話かというと、台湾で軍隊生活をしている時、よく仲間の兵隊と軍の物資を横流しして呑み代を稼いでいたそうです。特別な事ではなく、多くの兵隊がやっていた事だそうで…。まあ、終戦間際、日本軍も敗色濃厚で軍規も相当に緩んでいたのでしょう。横流しで得た金で夜な夜な軍の兵舎を抜け出し、街で呑んでいたそうです。

で、兵舎に帰る時は夜ですが、街灯などは無く、月明かりだけの田舎道を歩いていると、ある日、どこから聞こえるのか分かりませんが、誰かが「胡弓(こきゅう)」を引いているのが聞こえてきたとか。胡弓とは三味線の小型のような形の楽器で、弦をバイオリンのように弓で弾きます。独特の「切ないような」音が中国の旋律を奏でます。正直、真っ暗な夜道でそんな胡弓のメロディーを聞いたら、ちょっと怖いですよ。事実、一緒にいた仲間の兵隊は気味悪がっていたそうです。

それが、街からの帰り道、毎晩続いて聞こえてきたそうです(ということは、毎晩、呑み歩いていたという事です。なんという弛んだ兵隊…)。仲間の兵隊はそのメロディを気味悪がって、その道を足早に通り過ぎて行ったそうですが、好奇心が強いのかアホなのか、親父はその胡弓をこんな暗い夜に誰がどこで弾いているのかが気になって仕方が無かったようです。で、ある日、その胡弓の音の主を探しに行ったそうです。仲間の兵隊は、当然、親父を置いて帰って行ったでしょう。暗い中ですから、音だけが頼りなのですけど、探しても、その胡弓の音の主は分からなかったそうです。その後もそれが気になって仕方がなかったとか。この性格は私に遺伝してますね。親父は夜道で一人、その胡弓の音を聞いていたようです。

そうした不良兵隊生活を送っていたある日の夜、夜中に突然、敵機の襲来があったそうです。皆就寝中の事で、普通なら即臨戦態勢に入るのが軍隊ですが、軍規が緩んでいた兵隊たちは機銃掃射の音にパニクッったようです。親父は暗い兵舎の中で、これまたパニクって、とにかく起きようとした時、自分のすぐ横、1mあるかないかの場所に兵舎の天井を突き破って爆弾が落ちてきたそうです。その瞬間は当然「死んだ…」と思ったようですが、なんと、不発弾…。親父は九死に一生を、じゃなくて、どれくらいか分からないくらいの低い確率で命拾い。不発弾でも直撃を受ければ命はないでしょう。

その後も親父は相変わらず仲間と軍の物資を横流ししては街に呑みに行っていたようです。まあ、兵隊全員にもう厭戦気分が相当に強くなっていたのでしょう。親父は一応、軍刀を提げられる立場にあったようですけど、どれぐらい実戦を経験したのかは、話した事はありません。子供の頃、「父ちゃん、鉄砲撃ったこと、あるんじゃろ(方言)」と聞いたことはありますが、不機嫌になるのであまりそういった事は聞かなくなりました。

それで、命拾いした夜からしばらくして、また一杯気分で夜道を帰ってきていたら、あの胡弓の音がしなくなっていたそうです。仲間の兵隊は別に気にも留めていなかったようですけど、親父は気になったそうです。それ以来、その胡弓の音を聞く事はなかったとか。胡弓の音の主は、爆撃で亡くなったのか…。

終戦を迎えます。台湾から引き揚げてきた親父の戦後は、母親も結婚する前の事ですから良くは知らないと言っていましたが、親父が亡くなり、かなり歳を取ってから、「あんに(あの人)はどうも、進駐軍と付きおうて、悪さばっかりしとったみたいじゃ(方言)」。親父の最期は医者にも原因の分からない奇病でした。7年位アチコチの病院に入院しましたが、医者に聞くと、脳だけが異常に早く老衰していく…とか。結局、原因は分からずじまいで逝きました。

ここからが、この話の脈絡のなさの所以です。私はこう考えてしまうのです。「不発弾が落ちた時、親父は死んだんじゃなかろうか…。胡弓の音はその後も鳴っとったのに、聞こえんようになったんじゃないかのう…(方言)」。何故かそんな気がするのです。戦争が無かったら親父もファンキーな人生を送れたのかもしれませんが、戦地から引き揚げてきてから、性格が変わったというのを親父の友人から聞いたことがあります。昔は真面目だったのが、いい加減な言動ばかりになったとか。私の記憶にあるのは、そのいい加減な親父です。戦争が人を壊してしまうのでしょうか。

すぐ横に落ちた爆弾で親父が死んだ、というのは私の妄想ですけど、その瞬間から「生きるのを止めた=死んだ」のではないかと脈絡もなく感じるのです。しかし、その親父から私は命を貰っています。ちょっと矛盾…。私が覚えているその親父の病院での最期の言葉は「昨日、閻魔さんにおうて(会って)話をして来たんじゃ(方言)」。悪いけど、笑いました。

しかし、ホントにそうだったのかも…。私の頭の中では、兵隊の親父、胡弓の音、不発弾、戦地からの引揚げ、戦後、と脈絡もなくつながってしまうのです。戦地で何があったのか…? 戦争など知らない私には分かりません。

冒頭で述べた通り、この話に脈絡はありません。ですから、話としてのオチもありません。ただ、その胡弓のメロディはどんなものであったのかと想像します。

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