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不思議 その11「ボロアパート物語、そして誰もいなくなった…④」


空き部屋 これで全員の引っ越しが決まりました。思えば短い間でしたけど、最初の頃のように、毎晩、4人で屯していた時期が懐かしい。とはいえ、致し方のない事です。ここで余談ですが、もう引っ越し先を皆が探し始めている頃、別の同郷人がAの部屋をふいに訪ねてきたそうです。私はいませんでした。夜中にやって来たのですが、こんな事を言っていたそうです。「なんか、アパートの上を変な白いもんが飛んどったで」とか。もうAは腹が据わっています。今までの事をその友人に話すと、まもなく帰ったそうです。そいつは、今でいうイケメンのお坊ちゃまでしたが、怖がりなやつでした。

それぞれに引っ越し先が決まって、安酒屋で呑んだ記憶があります。別に今生の別れではないので、シンミリとした場になる訳ではないのですが、つくづく考えてみると本当に不思議な経験だったと語り合いました。私は比較的この手の事にはもともと否定的でも肯定的でもないのですが、他の3人にとってはとんでもない事だった訳で、3人ともあんなに怖い思いをしたのは初めてだったと…。そりゃそうでしょうね。世の中にはそういう「霊」的な存在がいるという事を否定しようもないくらい味わった訳ですから。

引っ越しの日取りもきまり、ABCが新しいアパートに越して行きました。荷物などリヤカーに詰める程度。その頃はまだリヤカーなんかがありまして、道路交通法もそれほどうるさくはなかったのです。

あのアパートから3人がいなくなりました。引っ越し先へは自転車で遊びに行ける距離ですが、やはり寂しかった。Aが住んでいたあの一階の角部屋(ちなみにそのボロアパートは木造二階建て)はズッと空き部屋のままでした。その手前のCの部屋も。そりゃそうでしょうね、大家ももう人に貸す気はないのでしょう。

そのうち、私も新聞配達のアルバイトを止め(このバイトを止めると言う事は部屋を追い出されると言う事です)、少々離れた隣の区に引っ越しました。それからしばらくはあの3人とも会う機会もなく半年くらいが過ぎたころだと覚えていますが、久しぶりにBのアパートに遊びに行きました。相変わらずボロいアパートに住んでいます。私もですが。

そこで驚くような話を聞きました。あの元のボロアパートですが、その後、大家が建て替えを決めたそうです。で、住人にそれを告げ、多少の退去補償金を出すと次々に引っ越して行ったそうですが、あのAの部屋の斜め上、二階の部屋に東南アジアからの留学生が住んでいたらしく、その留学生、なかなか次の引っ越し先が見つからず、最後まであそこにいたそうです。で、大家にカタコトの日本語でこんなことを言っていたとの事です。

「時々、夜、窓から人が中を覗いている」とか。そこは二階です。二階を外から覗く足場などありません。結局、そういう事を何度も言われるし、なかなか退去してくれないので、大家が警察に相談し、どうやら緊急入院措置が取られたようです。つまり、精神障害者にされてしまったようです。何ともやりきれない気持ちです。おそらく、ちゃんと日本語で説明できず、合理的にあり得ない事を訴えたからでしょう。二階の「窓の外から人が覗いている」なんて、誰も信じません。我々がいたら、弁護してやりたいと思っても、トドのつまり、誰がそんな「霊」的で、不可思議な事を信じてくれるでしょうか。法律がそもそも、そんなものは認めていませんから。

で、あのボロアパートからは誰もいなくなったという事です。その、異国の地で精神障害者扱いされた留学生に同情するとともに、われわれが経験したことも、今となっては何もなかったと同じ事であると感じました。その後も何度かあのボロアパートで一緒だった3人と会う事はありましたが、もうあそこで経験したことは誰も言い出さなくなりました。その後、それぞれの生き方も別々となり、おそらく東京に残ったのは私だけで、みな故郷に帰ったと思います。あの留学生がどうなったのかは知りません。

それからン十年経ちましたが、あのボロアパートがあった場所にはマンションが建っています。かつての面影など微塵もありません。あの大家の老姉妹も既に鬼籍に入られているでしょう。たまに車でその辺りを通る時に、その頃の事を思い出します。懐かしくはありますが、あの事は何もなかったに等しくなっているのです。不思議というものは、個人個人がそれぞれに「受け入れる」だけのものなのだと思います。「いる、いない」「ある、ない」「本当、嘘」等々、そこから敷衍するものなどは何もありません。

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